火山活動全般に関する用語
火山活動全般に関する用語
分類 | 用語 | 区分 | 説明 |
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火山活動 |
マグマや熱水や火山ガスなどの移動に伴って生じる噴火活動、地震活動、地殻変動、噴煙活動等の活動全般のこと。 「火山現象」も同義語として使用する。温泉作用、マグマの生成・上昇等も広義の火山活動である。 |
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備考 |
a) 様々な観測データを総合して、火山活動全体の推移を把握している。 b) 火山活動の状況をお知らせする場合、評価の根拠となる観測データや過去の活動履歴等を記載し、「活発な状況」「やや活発な状況」「静穏な状況」等、現在の活動状況を簡潔に表現する。 評価の根拠となる観測事実について「何が」「いつ」「どのようになったか」を明示し、必要に応じて比較対象(いつと比べて現在はどうなのか)を記載するなどして、評価の理由を記載する。 c) 今後の見通しについても、可能な限り記載する。 |
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火映 | 高温の溶岩や火山ガス等が火口内や火道上部にある場合に、火口上の雲や噴煙が明るく照らされる現象のこと。一般には夜間に観察される。 | ||
備考 |
a) 火映の強度を表現するため、肉眼もしくは監視カメラ(高感度カメラ)で確認できたかを記載する。 b) 火映の強度について4段階で観測している。 0:肉眼では確認できず、監視カメラ(高感度カメラ)によってのみ確認できる程度 1:肉眼でようやく認められる程度 2:肉眼で明らかに認められる程度 3:肉眼で非常に明るい色で異常に感じる程度 c) 硫黄の燃焼等、高温の溶岩や火山ガスと直接関係がない原因によって発生した場合には、「明るく見える現象」と呼ぶことがある。 |
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実例 |
![]() 火映の例(桜島 2014年) |
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噴火により放出された破片状の固体物質と火山ガス等が混合状態で、地表に沿って流れる現象のこと。 火砕流の速度は時速百km以上、温度は数百℃に達することもあり、破壊力が大きく、重要な災害要因となりえる。 |
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備考 | 火山によっては噴火警報等で「火砕サージ」や「ベースサージ」を「火砕流」の中に含めて警戒を呼びかけている。 | ||
用例 | 火口から概ね2kmの範囲では、火砕流に警戒してください。 | ||
実例 |
![]() 火砕流の例(雲仙岳 1993年) |
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主な事例 | 1991年6月3日に雲仙岳で生じた火砕流で43名が亡くなった。 | ||
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火砕流の一種で、火山ガスを主体とする希薄な流れのこと。 流動性が高く、高速で流れ、尾根を乗り越えて流れることがある。 |
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備考 | 発生前に流れ方を予測することが困難なため、防災対応上は希薄な火砕流が発生することを前提として、火山によっては噴火警報等で「火砕流」の中に含めて警戒を呼びかけている。 | ||
ベースサージ | 火砕サージの一種で、マグマ水蒸気噴火により発生する噴煙から側方に高速で広がる希薄な流れのこと。 | ||
備考 | ベースサージは火砕サージの一種であるため、火山によっては噴火警報等で「火砕流」の中に含めて警戒を呼びかけている。 | ||
主な事例 | 1952年の明神礁の噴火で発生した。 | ||
火山泥流 |
火山において火山噴出物と多量の水が混合して地表を流れる現象のこと。 火山噴出物が雪や氷河を溶かす、火砕流が水域に流入する、火口湖があふれ出す、火口からの熱水あふれ出し、降雨による火山噴出物の流動、などを原因として発生する。流速は時速数十kmに達することがある。 |
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備考 | 火山泥流と火山で発生する土石流との区別は明確ではないが、噴火警報等では、降雨により火山噴出物が流動することで発生する火山泥流のことをいう場合に「土石流」を使用する。 | ||
実例 |
![]() 火山泥流の例(有珠山2000年) |
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融雪型火山泥流 |
火山活動によって火山を覆う雪や氷が融かされることで発生する火山泥流のこと。 流速は時速数十kmに達することがあり、谷筋や沢沿いを遠方まで流下することがある。 |
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実例 |
![]() 融雪型火山泥流の例(ネバドデルルイス火山1985年):米国地質調査所HPより |
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土石流 |
多量の水と土石が混合して流れ下る現象のこと。 流速は時速数十kmに達することがある。降雨に起因するため、噴火が終息した後に発生することがある。 |
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備考 | 火山で発生する土石流について、火山泥流との区別は明確ではないが、噴火警報等では、降雨により火山噴出物が流動することで発生する火山泥流のことをいう場合に土石流を使用する。 | ||
用例 | 今後の降灰状況次第では、降雨時に土石流が発生する可能性がありますので注意してください。 | ||
溶岩流 |
溶けた岩石が地表を流れ下る現象のこと。 流下速度は地形や溶岩の温度・組成によるが、比較的ゆっくり流れるので歩行による避難が可能な場合もある。 |
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実例 |
![]() 溶岩流の例(伊豆大島1986年) |
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山体の斜面あるいは山体の大部分が一挙に崩壊し、高速で流れ下る現象のこと。 土石流と異なり、水を多くは含まない状態で発生・流下する現象である。岩屑なだれが下流で河川に流入して土石流となることもある。 |
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主な事例 | 1888年7月15日の磐梯山の噴火で岩屑なだれが発生し、477名が生き埋めになったとされる。堰止めにより桧原湖・秋元湖などが生じた。 | ||
空振 |
噴火などによって周囲の空気が振動して衝撃波となって大気中に伝播する現象のこと。 空振が通過する際に建物の窓や壁を揺らし、時には窓ガラスが破損することもある。火口から離れるに従って減速し音波となるが、瞬間的な低周波音であるため人間の耳で直接聞くことは難しい。 |
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備考 |
a) 噴火のほか、火砕流の流下などに伴い発生することがある。火山周辺以外でも、地震、津波、雪崩等によって発生することもある。 b) 人間が聞こえない低周波の音波まで観測できる「空振計」を用いて観測するほか、体感による観測も行っている。 c) 体感による空振は3段階で観測している。 大:窓ガラスなどが激しく振動し、時には破損することもある程度 中:だれにでも感じる程度 小:注意深くしていると感じる程度 |
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実例 |
![]() 空振による被害の例(浅間山 1950年) 火口から約9km |
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空振計(低周波マイクロフォン)は、空気震動を気圧の変化として観測しており、その観測値の単位として用いる。1Paは、1平方メートル(m2)の面積につき1ニュートン(N)の力が作用する圧力又は応力と定義されている。 | ||
土砂噴出 |
火山ガスの急激な噴出により、火口の周囲にある湯だまりの湯や土砂を噴きあげる現象のこと。 噴火の記録基準に満たない噴出現象であることが多い。 |
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備考 |
a) 阿蘇山の火山活動の記述で主に用いる用語。 b) 阿蘇山の中岳第一火口では、火山活動が高まるにつれて、湯だまりの湯量の減少~湯だまりの噴湯現象~土砂噴出~湯だまりの消滅・火口底の赤熱~本格的な噴火活動(多量の火山灰を噴出する噴火やストロンボリ式噴火等)へと推移することが知られている。 |
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実例 |
![]() 土砂噴出の例(阿蘇山) |
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火山灰などが地表に降る現象、あるいは降り積もった現象のこと。降雨の時に発生すると泥雨となる。 | ||
表面現象 | 噴火、溶岩流や火砕流の流下、噴煙活動、地表面の高温化などの火山現象が地表面に現れ、観測できる現象の総称のこと。 | ||
備考 | 火山現象の具体例を示して使用する。 | ||
用例 | 噴気活動や地表面温度分布などの表面現象に変化は認められていません。 | ||
(火山活動や噴火活動が)極めて活発(な状況) |
現時点で、火山活動(噴火活動)が極めて活発であること。活発さの度合いは火山ごとに異なる。 火山活動の評価の根拠となる観測データや過去の活動履歴、比較対象等を記載することで、原則として「いつ」から極めて活発な状況であるかを記載する。 |
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用例 | 霧島山(新燃岳)では、3月1日以降、噴火が断続的に発生していますが、3月10日以降、噴煙の高さが火口上3,000mを超える噴火が発生しており、噴火活動が極めて活発な状況となっています。 | ||
(火山活動や噴火活動が)活発(な状況) |
現時点で、火山活動(噴火活動)が活発であること。活発さの度合いは火山ごとに異なる。 火山活動の評価の根拠となる観測データや過去の活動履歴、比較対象等を記載することで、原則として「いつ」から活発な状況であるかを記載する。 |
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用例 | 阿蘇山では、10月1日02時頃から火山性微動が多い状態となっています。また、GNSS観測で9月中旬頃から深部のマグマだまりの膨張が続いており、阿蘇山の火山活動は10月に入ってから活発な状況が続いています。 | ||
(火山活動や噴火活動が)やや活発(な状況) |
現時点で、火山活動(噴火活動)がやや活発であること。活発さの度合いは火山ごとに異なる。 火山活動の評価の根拠となる観測データや過去の活動履歴、比較対象等を記載することで、原則として「いつ」からやや活発な状況であるかを記載する。 |
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用例 | 浅間山では、4月下旬頃から山頂直下のごく浅いところを震源とする火山性地震がやや多い状態となっています。また、5月上旬頃から傾斜計で山頂側がわずかに膨らむ変化が認められています。浅間山の火山活動は4月下旬以降やや活発な状況が続いています。 | ||
(火山活動が)静穏(な状況) |
現時点で、火山活動が静穏であること。活発さの度合いは火山ごとに異なる。 火山活動の評価の根拠となる観測データや過去の活動履歴、比較対象等を記載することで、原則として「いつ」から静穏な状況であるかを記載する。 |
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用例 | 雌阿寒岳では、3月以降火山性微動は観測されていません。また、ポンマチネシリ火口付近の浅いところを震源とする火山性地震も4月以降日回数10回以下と少ない状態で経過しています。地殻変動観測でも特段の変化は認められていません。雌阿寒岳の火山活動は3月以降静穏な状況が続いています。 | ||
(火山活動の)高まりがみられる(可能性) | 火山活動の状況が平常時に比べて高まりが見られる状況のこと。火山の状況に関する解説情報(臨時)で主に使用する表現。 | ||
用例 | 秋田駒ヶ岳では、本日(12日)に入り低周波地震が5回観測されました。秋田駒ヶ岳で低周波地震が観測されたのは2018年4月3日以来です。火山性地震も本日02時頃から増加しており、10時までに94回観測されています。その他の観測データには現時点では特段の変化は認められていません。秋田駒ヶ岳では火山活動の高まりがみられます。今後の火山情報に注意してください。 |