気象観測について
気象観測の概要
気象庁は、さまざまな観測機器を用いて気象の観測を行っています。
地域気象観測システム(アメダス)では、身近な気象要素である地上の降水量や気温、風、湿度、積雪深を、全国に約20km間隔で配置した観測点で自動で観測しています。また、全国の気象台などでは、より詳しい気象状況を把握するために、気圧、日照時間、視程なども観測しています(地上気象観測)。
気象レーダーによる観測では、電波を雨や雪などの降水粒子に当て、反射して戻ってくる電波を解析することで、降水の分布や降水域の風を把握しており、線状降水帯や台風、竜巻や突風をもたらす積乱雲等の監視に必要不可欠となっています。
気象庁は上空大気の観測(高層気象観測)も行っています。そのひとつのラジオゾンデは、温度計や湿度計などを吊り下げた気球を揚げることで、上空の大気を直接的に観測しています。ほかにもウィンドプロファイラ(WPR)は、地上から上空に向けて電波を発射し、大気により散乱されて戻ってくる電波のドップラー効果を捉えることで上空の風を間接的に観測するもので、特に強い雨をもたらす湿った大気の流れの把握に威力を発揮しています。また、地上マイクロ波放射計(MWR)は、大気中の水蒸気や雲などが発する微弱な電磁波の強さを測ることで、上空の水蒸気の量や分布などを知ることができ、線状降水帯をもたらすような水蒸気の流入の監視に威力を発揮しています。
はるか上空の宇宙空間からは静止気象衛星(ひまわり)が雲や水蒸気を観測しています。
このような基本的な気象観測に加えて、航空機の安全運航に欠かせない航空気象観測も行っています。全国の主要空港では、気象ドップラーレーダーを設置し、降水と風を観測しています。さらに、一部の空港ではレーザー光を用いたドップラーライダーを併用することで、降水のないときでも滑走路周辺の風の急変を捉えることができます。また、雷監視システムにより国内上空に発生した雷の位置を検知しています。これらの情報は、安全かつ確実・効率的な航空機の運航に役立てられています。
気象観測のイメージ(詳細はそれぞれの解説ページを参照のこと)
各種観測の守備範囲
大気中には、さまざまな気象現象が発生します。それらの中には、水平スケールが数千キロ・メートルにもおよぶ高気圧・低気圧といった現象をはじめ、それらより水平スケールが一回り小さい台風などの熱帯じょう乱や前線帯、さらに小さいスケールの集中豪雨をもたらす積乱雲群や線状降水帯、竜巻や突風の原因となる積乱雲などさまざまなスケールの現象があります。
これらの気象現象を3次元的に正確に把握できるよう、水平分解能や観測高度の異なる観測機器を組み合わせて観測を行っています。地上気象観測、アメダス、ラジオゾンデなどがポイント毎の気象状態を直接測るのに対し、気象レーダー、ウィンドプロファイラ、地上マイクロ波放射計、気象衛星などは、リモートセンシング(電波などを用いて遠隔で観測する方法)により広範囲の観測を行います。気象現象のスケールに応じて寿命や変動の様子も異なるので、それらを的確に捉えられるよう各観測の頻度が決められています。
さまざまな気象観測から得られる観測データの水平・時間分解能と観測高度
気象観測データの利用
さまざまな気象観測から得られたデータは、厳格な品質管理を経てユーザに提供されます。最近では計算機の性能向上により、多くの処理が自動化されるようになりましたが、最終的な品質の確保には人間の目によるチェックが必要な場面も多く、日夜、観測の現場において、観測システムの運用状況に加えて、観測データの品質についても監視しています。
こうして提供される一連の観測データは、多くの分野で利活用されています。気象庁の業務では、実況の監視はもちろん、警報・注意報などの防災気象情報を提供するための拠り所となるほか、降水ナウキャストや降水短時間予報、天気予報などの発表に欠かせない情報として利用されています。また交通機関の安全な運航の支援をはじめ、社会経済活動のいろいろな場面で利活用されています。
さまざまな気象観測データの処理と利活用