速度波形・変位波形の求め方
積分フィルター特性と漸化式
87型電磁式強震計や95型等の計測震度計で得られる地震波形は、地面の加速度に比例した波形です。この加速度波形を1回積分すると速度波形が得られ、2回積分すると変位波形が得られます。加速度波形を直接時間積分すると異常な長周期のノイズを生じることが多いので、 ここではローカットフィルターを用いて積分を行います。速度波形はカットオフ5秒の3次のバターワースフィルター(図1)、変位波形は機械式1倍強震計の特性を再現するフィルター(図2)を用いて積分を行っています。
図1 カットオフ5秒の3次のバターワースフィルター
図2 気象庁機械式1倍強震計の特性を再現するフィルター
なお、強震観測データに掲載している波形図における速度や変位の時刻歴は、加速度の時刻歴から以下の積分漸化式処理により求めています。なお、漸化式の係数の導出にあたっては、[斉藤(1978)(1)]の手法を用いています。
ある時刻tにおける加速度、速度、変位をそれぞれa(t),v(t),d(t) とすると、
・速度値と時刻[周期 5 秒以上をカットする 3 次のバタワースフィルターの積分漸化式]
v(t) = G×{B0×a(t)+B1×a(t-1)+B2×a(t-2)+B3×a(t-3)} - {A1×v(t-1)+A2×v(t-2)+A3×v(t-3)}
ただし
G = 0.004937561699,
A1= -2.974867761716,
A2= +2.950050339269,
A3= -0.975180618018,
B0= +1.0,
B1= -1.0,
B2= -1.0,
B3= +1.0
・変位値と時刻[気象庁 1 倍強震計(固有周期 6 秒、減衰定数 0.55)の振幅特性を再現するフィルターの積分漸化式]
d(t) = H×{D0×a(t)+D1×a(t-1)+D2×a(t-2)} - {C1×d(t-1)+C2×d(t-2)}
ただし、
H = +1.0,
C1= -1.988438073558305,
C2= +0.9885471048650272,
D0= +0.00002485615736514583,
D1= +0.00004971231473029166,
D2= +0.00002485615736514583
参考文献
- 斉藤正徳(1978): 漸化式ディジタル・フィルターの自動設計, 物理探鉱,31, 240-263.