気象業務はいま 2024

はじめに

 昨年は6月の台風第2号、6月から7月にかけての梅雨前線による大雨、9月の台風第13号などにより、多くの被害がありました。さらに、今年1月には令和6年能登半島地震により甚大な被害が発生しました。

 これらの災害により犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに、災害に遭われましたすべての皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 また、昨年は日本を含む世界各地で記録的な高温が発生し、世界と日本の年平均気温がこれまでの記録を大きく上回って統計開始以降最も高い値となりました。グテーレス国連事務総長の「地球沸騰の時代が到来した」という言葉に代表されるように、世界中で異常気象や気候変動に対して一層高い危機感をもって関心が向けられました。

 気象庁の任務は、災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆等に寄与するため、台風・集中豪雨等の気象、地震・津波・火山、さらに気候変動などに関する自然現象の観測・予報等と、その情報の利用促進を通じて、気象業務の健全な発達を図り、これにより安全、強靱で活力ある社会を実現することにあります。

 気象庁では、昨今多くの大雨災害をもたらしている線状降水帯の予測精度向上を喫緊の課題として、観測体制や予測技術開発の強化に注力しています。また、令和6年能登半島地震も踏まえ、津波等の監視体制の強化などにも取り組んでいるところです。

 加えて、自治体の防災対応をきめ細かく支援するため、「気象庁防災対応支援チーム」(JETT)としての職員派遣に加え、地域の気象と防災に精通した「気象防災アドバイザー」の拡充・普及をすすめ、地域防災力のさらなる向上に貢献して参ります。


 本書「気象業務はいま」は、このような気象業務の全体像について広く知っていただくことを目的として、毎年6月1日の気象記念日に刊行しています。

 今年は、気候変動に関する取り組みと令和6年能登半島地震について特集し、トピックスとして、地域防災支援、線状降水帯、地震・津波・火山に係る情報提供に関する取り組みに加え、気象情報が社会で活用されるための活動など気象庁の最近の動きについて取り上げます。また、世界気象機関(WMO)をはじめとした国際機関との関わりについても紹介します。

 多くの方々が本書に目を通され、気象業務への皆様のご理解が深まりますとともに、各分野で活用されることを期待しています。


令和6年6月1日

気象庁長官 森 隆志

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