長官会見要旨(令和7年2月19日)
会見日時等
令和7年2月19日 14時00分~14時25分
於:気象庁記者会見室
発言要旨
冒頭私から、3点述べさせていただきます。
1点目は、大雪についてです。今現在も大雪が続いております。これについては地元気象台やその他関係機関の呼びかけに十分ご留意いただきたいと思います。
これから述べますのは、2月4日から9日にかけての北海道地方や本州日本海側での大雪についてです。
まず、この大雪でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りいたしますとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。
この大雪についてですが、2月3日から4日にかけて北海道付近で低気圧が発達し、その後日本付近では、9日にかけてこの冬一番の強い寒気が流れ込み、強い冬型の気圧配置が長期間続きました。北日本から西日本にかけての日本海側を中心に広い範囲で大雪となり、普段雪の少ない太平洋側でも大雪となった所がありました。
この大雪に先立ち、当庁では、2月3日に国土交通省の関係部局と共同で「大雪に対する国土交通省緊急発表」を行い、不要不急の外出を控えることや、運送事業者等へ警戒を呼びかけ、各地域で国土交通省の関係部局や、高速道路各社等と連携して対応が取られました。
こうした呼びかけ等に対しては、自治体、道路・物流関係者、報道機関の皆様などのご協力のもと、大きな道路滞留等もなく、国民の皆さまにも御理解や御協力をいただけたと考えております。
今回の各地での大雪となったことについては、強い冬型の気圧配置が長く続いたことによりもたらされたことが特徴であると考えています。そのような状況となったことについて、3月に開催される異常気象分析検討会でもご議論いただけるようお願いをしているところでございます。
今後も、一時的に強い寒気が流れ込み、日本海側を中心に大雪となる可能性があります。大雪の際には、積雪の多い地域の傾斜地では、なだれの危険性が高まりますので注意が必要です。一方で、太平洋側の地方では乾燥した天候が続いております。火の取り扱いには十分ご注意いただきたいと思います。
また、これから季節が冬の終わりから春に向かいますけれども、この時期は北からの冷たい空気と南からの暖かい空気がぶつかり合って、低気圧が急速に発達し、「春の嵐」が発生しやすくなります。統計によりますと、仙台、東京、名古屋、広島など本州の多くのところで、10メートル以上の風が吹いた日数の平年値では3月が最大となっている状況です。そういう「春の嵐」の季節となりますので、強い風や高波などにご注意いただくとともに、気温の上昇に伴いまして、急速に雪解けが進んでなだれや土砂災害、河川の増水等にも注意が必要となります。
例えば、北陸地方整備局のホームページなどでは、1年間で信濃川の水量が一番多くなるのは4月とあります。3月や5月も多いとされています。一般に利根川などでは9月などが一番多いのですが、雪の多い地域では春先、河川の水量が多くなるとあります。そういうこともありますので、暖かくなり始めた時にはそういうことにも十分ご注意頂きたいと思います。
2点目、3点目はシンポジウム等に関することです。
2点目は、火山防災シンポジウムです。火山噴火予知連絡会の50年間にわたる活動を振り返り、火山災害への被害軽減のため活動火山対策の理解を深めることを目的に、本日この後15時から、「火山防災シンポジウム」を開催します。
ご存じの通り、火山噴火予知連絡会は、昭和49年の発足からこれまで50年間、我が国の噴火予知を推進する重要な役割を果たしてきました。昨年、改正活動火山対策特別措置法に基づく火山調査研究推進本部が文部科学省に設置され、火山調査研究が一元的に推進されるようになったこと、それから気象庁が噴火警報等の火山情報を発表するにあたり、火山専門家から火山活動評価等について技術的な助言を受ける機能は「火山情報アドバイザリー会議」として運用を開始したことから、火山噴火予知連絡会はその活動を昨年11月27日に終了したところです。
そういう経緯もございまして、このシンポジウムでは、火山噴火予知連絡会が果たしてきた役割と火山防災への展望をテーマに、今後の我が国の火山噴火予知・防災の更なる発展を期待して、歴代、連絡会の会長を務められた、井田喜明先生、藤井敏嗣先生、石原和弘先生、清水洋先生から、過去の噴火対応や今後の火山防災への展望などについて、それぞれのお立場から講演頂ければと考えております。今回のシンポジウムを通して、火山災害への理解をより深めていただければと考えています。
次は、今週末の2月22日土曜日13時から開催します、「令和6年度 気象庁・横浜国立大学共催 台風防災シンポジウム」についてです。
これは、台風に関する知見を更に高め、その予測精度を向上させることは、我が国にとって重要な課題ですので、この課題に取り組むため、台風科学技術研究センターを有する横浜国立大学との間で、令和5年11月に台風研究等に係る包括的連携・協力に関する協定を締結しております。
このシンポジウムでは、台風科学技術研究センターでセンター長を務めておられる筆保弘徳先生、副センター長の佐藤正樹先生にも登壇頂き、台風研究についての講演を行う予定です。
また、同じく副センター長の森信人先生をファシリテーターにお招きして、「温暖化の影響を踏まえた台風情報の活用」をテーマとするディスカッションの実施も予定しております。
今回のシンポジウムを通じまして、台風防災の重要性についてご参加の皆様と一緒に考えることができればと考えております。
私からは以上です。
質疑応答
Q:幹事社から1問、質問させていただきます。火山のシンポジウムについて伺います。火山災害は他の災害に比べてもやはりこの対策が手薄になっている企業そして地域もあるかと思うのですけれども、このシンポジウムをどのように活かすことを期待されますか。
A:ご指摘の通り、火山災害というのは気象災害等に比べて発生頻度が少ないです。また、特に、お住まいの近くに火山がない場合が多いと思うのですけれども、そういう場合、火山災害を意識することなく、十分な備えができていないという方もいらっしゃると思います。しかし、ひとたび火山噴火が発生しますと、その影響は甚大であります。また、近くに火山がない地域の方も、火山というものは観光地でもありますので、都市部などから多くの人が訪れております。そういう意味で、旅行に訪れているときや、登山に行っているときに影響を受ける可能性があります。また、遠方の火山であっても規模の大きな噴火になりますと、降灰等の影響を受けたりする可能性がございます。今回のシンポジウムでは、過去の噴火災害や防災対応などについて講演いただきますので、これを通して、火山災害への理解を深めて、ご自身のそばに火山がなくても、防災対策を考える機会として、役立てていただきたいと考えております。
Q:大雪の関係で、3日から4日にかけてですね、十勝で12時間に120センチという統計開始以来の最大の大雪がありまして、普段あんまりそんなには大雪がないところでこれだけの急な大雪で。当時大雪に関する気象情報は随時出ておりましたが、北陸なんかでは顕著な大雪に関する気象情報というものが運用されていますけれど、北海道の十勝とかで、それが運用されてない理由ということを改めてお願いします。
A:今回の十勝の大雪というのは、北海道の中でも非常に珍しいパターンの雪だったと思います。ご指摘の通り、あまり降らないところに、非常に大量の雪が降った状況です。原因については、皆さんもご案内の通り、低気圧が通って南風が吹いて、暖湿気が非常に多く入って、降水量が増えて、気温の関係で雪が多く降ったということになっています。非常に珍しいパターンだと考えております。ご指摘の「顕著な大雪に関する気象情報」はですね、短時間の大雪で重大な災害が発生する可能性が高まって、一層の警戒が必要となる場合、そのことを迅速に伝えるという目的で発表している情報でございます。具体的には、降雪の勢いが強くて、要するに除雪が降雪に追いつかない、そういう状況になるような降雪の場合に、大規模な交通障害が発生する可能性が高いですので、こういう情報を出すということにしております。そういう意味では、交通の障害を想定してということになりますので、短時間の大雪と大規模な交通障害との対応が明確になっている地域で運用する、目的を明確化するという意味で地域を絞っております。北海道や東北北部でも、もちろん大規模な交通障害が発生しているのは存じておりますけれども、その多くは暴風雪などが非常に多いです。こうした風の影響も非常に大きいので、短時間の大雪と大規模な交通障害の対応が明確ではない部分がありますので、現時点では運用しておりません。そういう意味で、暴風雪が予測される場合には、注意報や警報、それから府県とか地方の気象情報、場合によっては重大な場合は緊急発表等々を行いますので、そのような地元の気象台や関係機関からの情報にご留意いただければと思っております。
Q:もう一点、今回の三陸沖とかで発生した低気圧の影響なのですが、背景としてその三陸沖の海面水温が、観測史上最高だというような研究成果も出ておりまして、そういった温暖化の傾向と動きは、一般の人にはなかなかすぐには理解しにくいことが、今後とも起こり得るのではないかと思います。それで毎年大雪が降るようなところであればいいのですが、こうやって何十年かに一遍の大雪が突然ということが今後たまに起きるようなことになりますと、どういったことを心がけていったらいいでしょうか。
A:先ほど申し上げた通り、十勝地方は、そんなに雪が多いところではないと認識しております。そういうところで今回低気圧に吹き込む南寄りの風が暖湿気を含んで、かなりの水蒸気を陸地にもたらしたということと認識しております。そういう現象自体が温暖化によるものと、単純には結びつかないと思います。ただ、おっしゃる通り、三陸沖の海水温は黒潮の続流が非常に北上しているということで異常に近いほど海水温が上がっています。そういうものとの関係は、今後詳しく調査することによってわかってくると思います。あとは低気圧の発生や移動、そういう場合に地上でどのような風が吹くか、雪が降るかということは、その度に数値予報で予測できますので、必要なときにはそれによって呼びかけを行いますので、それに応じて注意・警戒していただくということになろうかと思います。ただ、そういうものが増えてくる、変化がある可能性など、もし調査でわかってくれば、普及啓発をして、地元の自治体をはじめ、いろいろな方に知っていただくことが必要だと思っています。いずれにしても、北海道の十勝地方の大雪をもたらした現象というのは、興味深い現象でありますので、しっかりと当庁でも、また研究所でも調査すると思いますので、その結果に基づいて、いろいろ対応していきたいと思います。
Q:まだ続いている日本海側の大雪なのですけれども、長官冒頭で各気象台から情報に注意とおっしゃってはくださっているのですが、改めて日本海側中心の大雪の注意点についてお話しいただいてもよろしいでしょうか。
A:まずこの冬の特徴ではあるのですけれども、一度寒気が降りてきて、冬型の気圧配置になるとですね、それが非常に長く続きます。例えば、時間あたりの雪がそんなに大量でなくても、何日間も雪が続きますので、トータルで非常に大きい積雪量になります。もちろん除雪は追いつくということになるかもしれませんけれども、それが無いようなところですと、トータルで積雪が多くなります。寒気も非常に長く居座りますので、そういう意味でご注意いただきたいと思っております。それから、毎日の天気予報を注意深く見ていただき、気象予報士の解説などを聞いていただくと、日本海に収束帯ができてそれが当たる地点では非常に雪が多く降る、突然急速に雪が降る、それは予測が難しい現象でもありますので、直近の予報、それから解説などを十分に聞いていただいて注意していただければと思います。
Q:2点あるのですけれども、まず大雪の関係で、先ほど十勝地方の大雪については言及がありましたが、いわゆる豪雪地帯と言われているところでも今年は雪が降り続いて疲れたというような話も聞こえてきます。この温暖化、あるいは海面水温とドカ雪の関係等ですね、十勝地方に限らず、この冬の現象について検討をしたりとかですね、気象庁として分析したりするご予定はありますでしょうか。
A:大雪と温暖化の影響というのは、研究所でも調べております。また他の大学の研究者なども調べております。当然今年の雪は非常に顕著で、記録も塗り替える積雪量となっておりますので、当然調査の対象になると思います。その結果を非常に注目しております。一般的に温暖化しますと海水温も高くなり、それから空気中の水蒸気も増えるということで、降水量としては増えるのですけれど、気温も上がりますから、雪になるかどうかというところで、平地は雪の量は減って、山地の方で、気温が低いところについては増えるだろうというような調査も聞いたことがございます。一般的にはそうなのですけれども、今年のような事例を見ながら、そういう調査の結果というものは更新されていくものだと思います。こちらの研究所でもしっかり調べるよう私からも指示を出しますし、他の大学の研究者の結果にも注目していきたいと思っております。
Q:もう1点なのですけれども、先日台風の情報についての公表について、見直していくという中間取りまとめがありました。非常に便利になるかなと思う一方で、精度の高さというのも非常に重要になってくると思います。2030年までに始めるとすれば、まだ時間はありますが、技術的な向上であったり、情報の伝え方という点で今後どのように取り組んでいくお考えでしょうか。
A:この情報のあり方については、まさにこの検討会の検討対象でございますので、その結果に基づいて、変更していきたいと思っております。問題は精度の向上だと思います。おっしゃる通り、いくら情報を変えても精度が高くなければ使えませんので、この点については線状降水帯の精度向上と共通する部分があると思います。例えば、水蒸気の量を的確に測るということは、台風の予測にとっては不可欠でございます。昨今、アメダスにも湿度計を付けたり、それからレーダーも二重偏波という方式を使って、より精度が高くなるようにしております。これも、順次更新しており20か所のレーダーのうちあと残り2ヶ所です。それから、次の衛星にはサウンダという立体的に水蒸気の量を測る、特に海上などでは非常にインパクトが大きいと思うのですけれども、そういうセンサーも搭載します。当然台風は海上で振る舞いが決まってまいりますので、そのインパクトもあろうかと思います。ただ、そのデータが入ってきて、それを用いたシミュレーションプログラムの更新等にも一定の時間かかりますので、データが入ってきてすぐというわけにはいかないと思いますけれども、そういう中で2030年以降数年かけて、かなり精度が上げられるのではないかと考えております。
Q:冒頭ご発言の中でこの2月の上旬の大雪について異常気象分析検討会で議論していただくというご発言がありましたけれども、何かそれはイレギュラーなことなのか、この2月の大雪現象というものが、この検討会がそれを認定する場なのかどうかはわかりませんが、異常気象だと考えられるから検証をお願いするとか、何かその狙いというか意図というか、ご説明いただけますか。
A:私自身が検討会にお願いしている内容というのは、その2月4日前後の大雪現象そのものというよりは、今年の雪、寒気の入り方が、実は12月もそうだったのですけれど、一度入ってくると長期間居座って冬型がずっと続くという部分です。そういう長くかかるというところは、今後やっぱり影響が大きいと思いますので、そこの部分、どうしてこんなに長くなるのかということについて、ぜひご議論いただきたいと、検討会の会長にも申し上げていますし、こちらの担当事務局の気候情報課にも指示を出しているということでございます。ただ、結果として今年の雪が異常かどうかということについては、当日の検討会でいろいろ議論されるということだと思います。
(以上)