長官会見要旨(令和6年6月19日)

会見日時等

令和6年6月19日 14時30分~15時10分

於:気象庁記者会見室

発言要旨

 まず、本日の会見は当初14時開始予定でありましたが、国会対応があった関係で30分繰り下げさせていただきました。ご協力ありがとうございました。
 それでは、冒頭に私から、2点述べさせていただきます。
 1点目は、大雨や暑さへの備えについてです。
 5月27日から28日にかけて、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、北海道を除く広い範囲で大雨となりました。また、一昨日(17日)から昨日(18日)にかけても同様の理由で東日本から西日本の太平洋側を中心に大雨となりました。
 これらの大雨につきまして、気象庁では、各地の気象台から段階的に防災気象情報を発表し、警戒を呼びかけたところです。また、先月の会見でもお知らせしました、府県単位での半日程度前からの線状降水帯による大雨の可能性の呼びかけについて、当初は5月28日からの運用を予定していましたが、大雨が予想されたことから、運用開始を1日前倒しして、5月27日より運用を開始しました。これらの大雨においてこの呼びかけを行いまして、結果として、線状降水帯の発生には至りませんでしたが、この呼びかけにより早い段階から大雨の危機感をお伝えすることができたと考えています。
 これから梅雨の末期にかけて、引き続き大雨が心配される時期となります。各地の気象台が発表する注意報や警報等に加えて、土砂災害や洪水災害等の危険度がどこで高まっているのかを地図上に示した「キキクル」も活用いただいて、早めの防災行動や防災対応をお願いしたいと思います。
 さらに、まだ体が暑さに慣れていない時期ですので、これからの時期は急激に気温が高くなることがありますので、熱中症への備えが必要です。環境省と共同で発表しています「熱中症警戒アラート」をはじめ、気象庁が発表するさまざまな気温に関する情報や、環境省のホームページに掲載されている暑さ指数といった情報を活用いただいて、皆様が置かれている状況に応じて、こまめな水分補給や冷房の適切な使用など、対策を取っていただきたいと思います。
 2点目は、「防災気象情報に関する検討会」の最終とりまとめについてです。
 令和4年1月から計8回開催してまいりました本検討会の最終とりまとめについて、昨日、座長である京都大学の矢守克也教授から手交いただき、その後、座長同席のもとの記者会見を実施したところです。
 本検討会では様々な論点があり、委員の皆様には多岐にわたって議論いただきました。特に、警戒レベル相当情報の名称に関しましては、委員から多くの意見があり、最終的に座長・副座長一任になるなど非常に難しい議論となりましたが、現時点において最良の名称案を取りまとめていただいたものと考えています。
 今回整理いただいた情報改善につきましては、令和8年度出水期の運用開始を目指しております。
 気象庁としましては、引き続き水管理・国土保全局と連携し、運用に向けた詳細な検討を進めてまいります。
 また、情報体系の大きな変更となりますので、国民への周知も大変重要となります。この点もしっかり取り組んでまいります。
 私からは以上です。

質疑応答

Q:幹事社から2点伺います。今触れられましたけども「防災気象情報に関する検討会」で取りまとめられた報告書を受けて、まず一点は、長官が具体的にどのように結論を受け止めているかです。あともう一点は関連して、2年後をめどに実用に取り入れていくのであれば、実際どのような形になるのか。昨日の会見では、事務局の気象庁側からは、提案内容を十分尊重していきたいと、大きく外れることは想定されないが、法制度とか伝え方の面で検討を要するという趣旨の説明もありました。長官としては具体的に法制度との兼ね合いとか、伝え方の面で、どのようなところを詰める必要がある、どんなところを精査検討する必要があるとお考えでしょうか。2点です。

A:どのように昨日の取りまとめ結果を受け止めているかという点ですが、まず、この検討会は、先ほど話した通り、令和4年の1月から始めて2年半ぐらいご議論いただいたということです。つまり、それだけの時間を要したということは、本当にいろんな意見があったということだと思います。特に、警戒レベル相当情報のところについては、シンプルでわかりやすくというところがキーワードではあったのですけど、今度はシンプルにしてしまうと、かえって中身がわかりにくいということになる場合もあるので、この辺のところは、まさに意見がわかれたところだったと思います。例えば、報道する側からすればテロップなどで流す場合、短い方が良いという考え方もあると思うのですけど、今申し上げた通り、短くしすぎてしまうと、どういう危険があるのかというのが具体的に見えない場合もあったりします。そのような部分などで意見が分かれたと考えています。最終的なところは、座長、副座長一任という形になりましたが、意見の兼ね合いのところを勘案して、昨日、矢守座長が言っておられましたけど、100%というものではないと言っておられたと思いますけど、やっぱり100%というのは難しいのだと思うところです。おそらく何かを立てれば何かが立たなくなるということもあるので100%というのは難しいなと考えます。そういった中で、現段階における最良の案という形で取りまとめていただいたと思っています。気象庁、水管理・国土保全局と共同で事務局をしていますが、両者において、いただいた結果をしっかり受け止めて、これから対応していかないといけないなというところが私の感じているところです。
 その次に、令和8年度に運用開始を目指すということに向けて、どのような形になるのかという話があったと思います。昨日の最終取りまとめの結果を重く受け止めて対応するということなので、折角取りまとめていただいたものから外れた方向に持っていってしまってはいけない、それはあってはならないことだと思っています。ただ、実際運用開始するにあたっては、現実的にどうするのかという話が出てくると思いますので、この辺が今後の検討だと思っています。
 一つは制度面のところで、法制度をどうするかというもの一つの検討になります。改正しないで済むことをわざわざ改正する必要はないですが、例えば、洪水について特別警報はないわけですので、洪水について特別警報を位置づけていこうとすれば、これは法改正が必要になってくるというようなことがあります。
 このほか、予報業務というのは気象庁長官の許可が必要ということになっていますけど、水管理・国土保全局と共同で行っている洪水予報の場合は、水管理・国土保全局が許可を得る必要ないという免除規定というのがあります。これも例えば、洪水以外について水管理・国土保全局と共同でやっていきましょうというようなことがあれば、それについて許可を免除しますよとする場合、法改正の対象になるということになります。そういう具体的な制度の面については、有識者ではなく、気象庁と水管理・国土保全局で考えていかないといけない部分だろうと考えています。
 また、伝え方の話もあったと思いますけど、シンプルでわかりやすくということで、自治体であるとか、国民の皆様に使っていただいて初めて意味があるわけです。伝え方の大事な側面としては、情報体系が大きく変わることになりますので、今の時代は、皆さんが情報を受けるときは、システムを経由して受けておられるはずですので、内容の理解も必要ですが、受け手側のシステムを改修していただく必要も生じます。このための時間も必要だと思いますし、受け手側の準備のご都合もあるので、こちらからいつまで必ずやってくださいという義務化するものではないと考えます。そういう意味で、令和8年度の出水期の運用開始を目指すという言い方になっていると考えています。

Q:防災気象情報の見直しについてお尋ねします。今回新しく考えなければいけない点ではないとは思うのですけど、今の時点で、別々の機関から警戒レベルの避難情報と警戒レベル相当の情報が、住民にとっては2つ届く形になると思うのですけれども、これが実際には全く同じものではなくて、リンクはするけれども、自治体は、警報や特別警報を参考にしながら出していくというのが現在の運用の方法だと思います。ここが特に変わるわけではないとは思うのですけれども、今回整理したことで、より避難情報と防災気象情報の結びつきが整理された反面、情報の違いというのが、住民の感覚としては戸惑う場合があるのではないかなと思ったのですけれども、改めて先般からの課題だと思うのですけども住民にとって、防災気象情報をどういう情報だとして受け止めていただいて、それを踏まえて避難情報との違いも含めて、どういう風に使っていってほしいかというのをお願いできますでしょうか。

A:警戒レベル相当情報と言っていますが、相当とはなんだということにも関係するのですけど、警戒レベル自体は避難行動と直結しているもので、災害対策基本法に基づいて、市町村長が、避難指示を出すとか、そういうところがつまり警戒レベルだと思います。警戒レベル相当情報の防災気象情報が警戒レベルと結びつきやすくするというのは、確かに今回の見直しの目的の一つだったというところです。そういう観点から、結びつきやすくするようにレベル2・3・4・5というものを、注意報、警報、それから危険警報、特別警報といったように、現象とか災害の種類に関わらず、統一した表現にしましょうということで、警戒レベル、つまり避難に結びつく情報に、わかりやすく繋がるようにしようといったところです。これ自体をまず避難情報を扱われる自治体にしっかり周知していく必要があると思いますけども、もちろんその情報というのは自治体用というだけではなくて、国民の皆様に、報道機関の方々などを通じて直接提供されることになりますので、新しく体系的に統一的にしましたよということを国民の皆様にもきちんと周知していく努力が必要になると考えております。

Q:実際のところ、例えば、土砂災害警戒情報が出てもレベル4の避難情報が出されないとか、逆に先に出たりするところで、情報の発表のタイミングのずれみたいなのがあると思うのですけれども、そこを住民としては、どっちをより強い情報として受け止めたらいいのかというところが簡単にはわかりづらいかなと思ったのですけれども、そこのあたりを今回初めて生まれた課題ではないと思うのですけど、このタイミングで改めてお聞きしたいなと思ったのですけどいかがでしょう。

A: 自治体からの避難指示がありますが、住民の皆様から見たときに、避難指示が出されるのを待つのかどうかというところがあります。それぞれの住民の皆様が置かれた環境は個々に異なると思いますので、例えば自治体から避難指示が出ていないけれども、自宅の周辺が安全でないという場合などで自主的に親戚のところに行こうとか、そういう判断もありうると思います。そういう判断のところの一つに、防災気象情報、新たな体系の防災気象情報というのがお役に立てれば、それは防災気象情報の活用のされ方の一つではないかと思っています。

Q:別の質問です。線状降水帯予測のところで数としては14地域に出して、全て今のところ空振りになっているというところですけれども、ただ実際に雨量としては基準に達した地域もあったかと思います。まだ始まってまもない段階ですけれども長官としての今の実績の評価というのをできますでしょうか。

A:先ほど冒頭でお話した通り5月の下旬のところの大雨とそれから一昨日から昨日にかけての大雨については、線状降水帯に関する府県単位が県単位のところでの呼びかけ、半日前からの呼びかけを出させていただいて、結果的には、今お話あった通り、線状降水帯は発生しなかったところです。今お話があった通り、5月下旬のところですと、例えば条件の一つである前3時間積算降水量の最大値150ミリなどについては、徳島県と高知県では超えたところもあります。あとは昨日、一昨日のものについても、東海道新幹線が一時運転見合わせとなるなど大雨にはなったと考えています。ただ、この2件のところについては、線状降水帯の発生のポテンシャルというのは当然あったので、呼びかけをしましたが、今回どちらも前線を伴った低気圧であったわけですけど、西から東に比較的早めに移動したこともあり、同じところに長く雨雲が留まらなかったということもあって、発生基準を満たさなかったと考えています。府県単位の予測は始まったばかりですので、今回の2件も含めて検証しながら事例を積み重ねつつ、精度を上げていきたいと考えています。

Q:防災気象情報に戻りますが、今回かなり大幅な見直しが検討会の方からは提案されました。これまで大きな災害の度に、気象庁としては、これを事前に知らせるためにはどうしたらいいかということを考えて情報を作ってきた。内閣府であったり、国交省の水局もそうだと思いますが、ただそれがわかりにくい状況になっていたという中で、今回かなりこの防災気象情報の大きな転換点とも言えるような大きな改編になるとは思うのですが、大きく変わるということに対する長官の受け止めであったり、大きく変わるということは、運用、周知が難しくなって、スタートがかなり難しいと思うのですけれども、先ほどのご発言の中にもしっかり周知をしていくことが重要だというお話ありましたが、もう少し具体的にどういったことで自治体や国民の皆様に周知をしていくのかお考えをお聞かせください。

A: これまで今の防災気象情報の体系に至る経緯というのは、個々に新しい情報を作っていたときには、これがいいだろうと思って、新しい情報を付け加えて、運用してきたところです。ただ、今に至って状況を見ると、例えば、河川に関するものだけでも、気象庁関係と水管理・国土保全局関係で複数の流れがあったり、土砂災害も土砂災害警戒情報とか少し特殊な情報になっていたりするので、こういうこともあり、全体としてわかりにくい形になったのだろうと考えています。それを考え直すタイミングではないかということで令和4年から有識者の検討会を立ち上げてご検討いただいてきたところです。これについては先ほど言いましたけど現時点で、最良の形にまとめていただいたので、今度は具体的な運用に向けて取り組んでいくということになります。それを周知していくところは、あらゆる手段を通じてということになりますが、具体的には自治体に関しては、各地方気象台から都道府県であるとか市町村に対して、これまで同様にご説明をしていくということになります。また、自治体の皆さまは、この情報をシステムで受けておられるので、それ改修していただかないといけないので、そういったきめ細かなところも含めて気象台から自治体に説明していくことが必要になると考えています。
 国民の皆様へというところでは、例えば、リーフレットを作るとか、ホームページで新しい防災気象情報の体系について特集するなど、そういうサイトを立ち上げて、ご覧いただけるようにするとかが必要だと思います。
 また、特に国民の皆さんに周知するというところでは、報道機関の皆様の力は大きいため、皆さまにも周知のところにあたっては、ご協力をいただければ大変ありがたいと考えています。

Q:線状降水帯の半日前予測の話題でお尋ねします。半日前予測を出されたのが、大きく分けると2回という形になります。これまで例えば、半日前予測を出すにあたって、地方気象台の方で会見をされたりだとか、あとそういう半日前予測の情報を受けてダムの方で放流開始したりだとか、事前に電車を運行見合わせしたりだとか、半日前予測を出されることで、やっぱり社会の方としても備えなければということでいろいろな動きが出てくる中で、トータルの量で見るとかなりの雨が降ったとはいえ、線状降水帯は実際発生しなかったっていうのが今回の2回のそれぞれの事例に当たると思うのですけれども、予測の難しさは承知の上でお尋ねするのですけれども、そういう半日前予測を出すことで、社会に影響を与えることについての長官のご見解と、また半日前予測を出したからといって絶対に発生するわけではないという情報なので、どう国民に理解をしてほしいかっていうところを改めてお伺いできますでしょうか。

A:線状降水帯というキーワードを用いることによって大雨に関する警戒感を持っていただきやすくはなったと思っています。実際、大雨になった箇所というのは先月末も、一昨日から昨日にかけてのものも、大体その範囲は合っていたと思うので、そういう大雨に対する警戒感を持っていただくというところでは、発生しなかった場合でも呼びかけた意味はあったと考えています。
 一方で、その線状降水帯というもので呼びかけておいて、それで発生しなかったっていうものが続いてしまうと、今度はオオカミ少年的に見られる可能性があると考えています。そうなってしまうと、今度はまた防災上の効果としてマイナスになってしまう可能性もあります。そういう意味では、線状降水帯の呼びかけをしても発生しないこともありますよということについて周知もしないといけないとともに、個々の事例をしっかり検証して的中させていく努力、精度向上に向けた努力を常にしていくということが必要だと私としては考えています。

Q:もう一点。来月1日で能登半島地震から半年になります。1月1日から気象庁の中でも当時の情報発表や対応について検証されてきたと思いますが、能登半島地震を受けて気象庁で新しい動きをするとかあればお伺いします。

A: おっしゃる通り、来月の1日で元日の能登半島の地震から半年ということになります。まず、地震活動自体は元日の地震の発生前よりも活発な状態というのは続いています。6月3日にも震度5強の地震が発生していますので、引き続き、地震活動には注意をしていただかないといけないと考えています。
 そういう意味で気象庁としても、引き続き、能登半島に限らず、地震活動、津波も含めて、しっかり監視していかないといけないと考えています。
 能登半島地震の対応については、振返ってみて、全般的にはしっかり対応できたのではないかと考えています。過去の地震災害とかを踏まえて、対応したものが功を奏したものもいくつかあると思います。
 例えば、一つは津波関係とかですと、地盤の隆起で津波の観測ができなくなったということがありましたけど、可搬型とか機動型の津波観測装置を用意していたことで、比較的早く観測を再開できたというのもあります。
 一方、よくなかったとことしては、誤った震度7の情報を出したということです。これは絶対にあってはならないことなので、再発しないよう対処をおこなったところです。
 今後については、まだ検討中ですけれども、津波の観測網のところについて、能登半島地震の津波もありましたけれども、例えば、昔はそんなに高い津波はないとされていたところも、活断層などの調査の関係から、結構高い津波が来る可能性があることなどが予想されるなど、こうした最近の知見などを全体的に確認したうえで、必要があれば、津波の観測網について、強化をするなどの検討は進めているところです。

Q:いまおっしゃられたのは日本海側でのことでしょうか。

A:日本海側に限るものではありません。

Q:全国的にということでしょうか。

A:最近の知見というのは必ずしも日本海側だけではないので、これを機会に全国的に日本海側を含めて検討をしているところです。

Q:新しい知見が出てきたとおっしゃられていますが、能登半島地震もそのきっかけの一つに入っているということでしょうか。

A:きっかけの一つではあります。例えば、能登半島地震をきっかけに能登半島周辺の海底の活断層、そういうものが地震調査委員会でも話題になっていますけれども、それも一つの知見だと思います。それ以外にも、地震調査研究推進本部などにおいて、ここの活断層が動いたらこのくらいの津波が来るのではないかという新しい知見がありますので、それを全体きちんと見たうえでという意味です。

Q:重ねて恐縮ですが、強化というのは機器をパワーアップさせるという意味でしょうか、数を増やすという意味なのかどちらでしょうか。

A:基本的には増やす方です。

Q:いつ頃目途にという状況なのでしょうか。規模感についてはどうでしょうか。

A:規模は何とも言えませんが、タイミングとしては、来年度の予算要求に向けて検討するということがあると考えています。必ずそこに間に合うとは申し上げられませんが、そういうタイミングが一つの候補だと考えています。

(以上)