気象庁地震観測所第2号 25~56頁 昭和55年3月

ひずみ地震計改良更新の現況と観測結果について

山岸 登・柏原静雄

 当所の石英管式ひずみ地震計は,東海および南関東地域に展開されている埋込式ひずみ地震計とは,観測の意義が多少異なっている。後者は,来るべき東海大地震や首都圏を襲うかもしれない直下型地震の発生を,事前に予知することを現実の主目的としている。他方,前者はもちろん,地殻ひずみの連続観測から短期および長期的地震予知技術の向上に寄与することを目指しているが,場所的にみても危険が差し迫っている地域の異常を,直接監視の対象とするものではない。現象の弛み無い観測によって,地震現象の解明に役立つ資料の蓄積と提供を行い,さらにこの測器の特長を生かして,遠隔地に発生する海洋性大地震の津波対策に資し,加うるに地球内部構造のより詳細な究明などに貢献するためである。従って,今回の更新に際しては上記の目的をふまえ今日までの経験もいかして,斬新的技術の導入と高度の解析に耐え得るデータの獲得,および処理の能率化などを心掛けた。整備計画のあらましについては,当所の技術報告第1号に記載済である。ここでは,施設が完成し,全システムが稼働されている現状を,処理結果も含めて具体的に報告する。

1.ひずみ地震計の設置工事

 測定の機器や技術の高度化,データ処理の高能率化など,計画通りの理想がたとえ実行されても,基本となる観測値そのものの信憑性に疑いがあっては,折角の改良更新も無意味になる。このため新設した4つの中間測定点の基台は,上部の瓦礫を取り除いたあと,岩盤を30㎝掘り下げ,亀裂のある場所はモルタル詰めをし,完全に水洗いした後,基台が基板と密着するようにした。固定端部,自由端部および中間支持点の各基台は使用に耐えうるため,そのまま利用した。但し,ワイヤの支持は全部ボトルをゆるめ,枠のくせを取り除いた状態で再固定し直した。石英管の布設は,あらかじめ用意した治具を枠に取り付け,芯出し(横方向のズレで,トランシット使用)と水平レベル(水盛方法)を出した後,行った(両者とも100mで±2㎜以内に収まっている)。石英管は一方がラッパ状に加工され,他方をはめ込んで溶接した。溶接時間は1か所約1時間を要し,十分にアニールをほどこし温度によるひずみを減少させた。そして,治具のそのままの位置でワイヤによる支持を行い,ワイヤを固定したあと治具をはずした(写真‥1,2,3)。

2.観測機器について

 従来のひずみ地震計はNS,EW成分とも100mスパンの1点観測であったが,前記のように今回は新たに30mと70mスパンのものを両成分に増強した。EW成分にはこのほか,ストレインステップ調査のため以前設けた2つの臨時観測点(45mと5m)もこのシステムに取り入れた。また,地殻変動の観測に大きな影響を及ぼす気温(2点)と気圧(1点)の測定器および既設LM地震計(固有周期30秒)とV2短周期地震計(固有周期1秒)の地震波も同時に取りこんでいる。第1図は,上記各機器の坑道内観測室における配置を示したもので,以下にそれらの詳細をのべる。

 i)石英ガラス管

 測定の基準となる石英ガラス管は,管長4mの東芝セラミック製,不透明石英ガラス管T-100(S-30)形を用い,接合部は水素で溶接し,NS・EWとも全長約100mになっている。管の寸法は内径32.5±2.5mm,肉厚3.2±0.8mmの中空管で,線膨張係数5.4×10-7,軟化点1550℃,耐圧力27.4kg/mm2の特性をもっている。

 ii)ひずみ地震計の構造

 石英管は,固定端部では,固定金具と基台により岩盤に固定され,自由端部では板バネで吊り下げ,支持されている。中間はステンレスワイヤでそれぞれ支持され,軸方向の動きを拘束しないようになっている。従来のひずみ地震計部品で,今回使用したものは,発泡スチロール製のカバー,第2図および写真:4に示した中間吊点の支持枠とその基台,固定端部基台,(第3図),自由端部基台(第4図)である。松代地震に伴う Strain stepの調査で,石英管の支持状態の不安定さがステップの一つの原因たり得る可能性が知れていたので,今回は支持方法を種々検討し,第2図及び写真:4でみられるようにBenioff吊りとした。左右両側の支持砕から斜め下方に吊り下げたステイレス製支持ワイヤは,ワイヤ固定部で完全に固定され,ワイヤの張力はワイヤガイドロッドとワイヤ巻取装置との間で測定し全体のバランスを調整した(写真:5)。但し,ワイヤには初期伸びがあるため,一度設置した後,2か月経て再測定を行った。第3図及び写真:6は石英管固定端部の構造で,既設基台上に花崗岩(50cm×80cm)を乗せ,固定金具と石英管とは完全な摺り合せをし,石英管の全面が金具に接触するようにしてある。従来の石英管は磁歪検定装置を介して基台に固定していたので,石英管全体の支持位置が高くなり,また,構造も復雑になっていたが,今回は図のように極く簡単化した。第4図及び写真:7は石英管自由端部の構造で,石英管の支持は振動に対する横振れを除くため段付板バネを用い,信号変換器(センサー)及び歪力発生器のコイルを石英管に取りつけてある。従来の方式はセンサーに容量変換型を使用していたため,構造が復雑で,図体も大きく,調整にも手間がかかったので,固定端部同様構造を簡単にした。

 iii)信号変換器

 固定端部を基準として,中間測定点並びに自由端部との相対的変位量すなわち,地殻の伸び,縮み量を測定するものである。センサーは新光電気社製800-9型変位計と1501型差動トランスとを組合せてあり,測定精度0.05μ,最大測定幅±50μをもっている。第5図及び写真:8に示したように,トランスのコイルは石英管から吊り下げてある。コアはパルスモータに連結し基台に固定してある。パルスモータはコアを機械的に移動させ,コイルとの相対位置を人為的に変化させたり,零位置の調整を行うもので,操作は観測室の検定信号発生器(2)からのリモートコントロールで行われる(第9図参照)。なお,コイルの取付金具には石英管の軸方向と直角に,キューブコーナ形の反射鏡が取付けられている。これはレーザ光線を用いた変位量測定器により,正確な変位量を測定し差動トランスの感度校正を行うのに用いる。

 iv)検定装置

 石英管全体の支持状態及び信号変換器の感度校正を行うもので,石英管歪力発生器と変位量測定器がある。

a)石英管歪力発生器

 石英管に強制的な力を与えて歪を発生させ,差動トランスの検定を行うのに用いる。構造とその外観は第6図及び写真9で示したように,石英管の自由端末にはコイルを取り付け,他方マグネットは受架台を介して基礎台に取り付けてある。

 コイルに流す電流の大きさとその方向を変えることにより,圧縮または引張りの力の大きさを制御し,操作は観測室の検定信号発生器(1)で行う。(第9図参照)

b)変位量測定器

 ヘリウムーネオンガスレーザを用いた横河ヒュレットパッカード社製5526A形精密測定システムで,表示装置,干渉計,シングルビーム測定器から成っている。レーザの出力を2つのビームに分け,再び2つのビームが結合するときの周波数の差異から,両者の経路差を算出する方法を用いている。分解能は0.01μm,測定範囲は±2.5mmまで可能である。

 v)温 度 計

 観測室内の気温を高精度で測定するもので,南北と東西成分にそれぞれ1台ずつ設置してある。白金測温抵抗体(千野測器社製R800-9)をセンサーとした4導線式温度計で,その構造を第7図に示す。石英ガラス管の中には乾燥空気が封入され,内部リード線に白金を用いてある。測定値の誤差を小さくするため,ブリッジはセンサーの近くにおいてある。観測室内の現況を考えて測定範囲は13.5±1℃に設定し,分解能を1/1000℃としてある。

 vi)気 圧 計

 アネロイド気圧計の空盒にマグネセンサーが直結され,気圧の変化に応じた空盒の変位をマグネセンサーによって電気信号に変換するもので,構造を第8図に示す。マグネセンサー及びマグネットの横振れを防ぐため,上部の板バネで支持している。検定は重りをのせ,加重量と出力電圧値との関係から行い,実際の測定範囲は975±50mb(現地気圧)とし,分解能は1.5/1000mbとなっている。

 vii)筐   体

 観測室の筐体には,第9図及び写真10でみられるように,打点記録計,検定信号発生器(1),検定信号発生器(2),整合ユニット(3段)などが上から順に収容されている。

 a)打点記録計

 伝送系障害時のバックアップ用として,色別6打点式記録計によるモニター記録がなされ,打点間隔5秒,記録紙は1時間12.5mmで送られている。このほか処理室の受信装置に付属する打点記録計は2台あり,時計と同一の筐体内に収容され,伝送された地殻変動データをそれぞれモニター記録し,常時監視を行っている。

 b)検定信号発生器

 2種類あって,発生器(1)は石英管歪力発生器のコイルへ電力を供給する電力増幅器で,10Wの出力能力を有している。信号源として低周波発信器を内蔵し,供給電力の周波数を変えることができ(0.02Hz以上),また,DC電力も供給できる。供給電流は駆動電流計にディジタル表示させる。発生器(2)は,信号変換器の零位置シフト駆動部に,制御信号を供給する制御器で,リモートコントロール用のパルスモータ駆動ユニット及びパルスカウンタ(1パルスで約0.04μm移動)を内蔵している。

 C)整合ユニット

 各センサーからの信号レベルやインピーダンスを伝送装置の入力条件に整合させると共に,伝送データのサンプリングによって生ずる,エリアシングを防ぐフィルタを内蔵した増幅器である。フィルタの帯域幅,利得などは各センサーの感度,サンプリング速度によって異なり,地殻ひずみ,短周期地震波,長周期地震波,ひずみ地震波,温度計・気圧計用の5類がある。

 viii)無停電電源装置

 3号庁舎の既設電源装置室内に新設し,坑道内各機器及び送・受信装置に定電圧,定周波電力を供給する装置である。第10図に示すように,充電器,自冷冷却式のCVCFインバータ,蓄電池(54セルで200AH),絶縁トランス(入力200V,出力100V,容量3KVA)および耐雷トランス(電圧100V,容量3KVA)から構成されている。充電器は,交流入力を直流に変換し,蓄電池及びインバータに直流電力を供給する。この装置はフローテング方式で,停電時には瞬間的な停電もなく連続して電力を供給し,偶発する停電に備えている。現状での使用ならほぼ7時間以内の停電をカバーすることができる。なお,インバータなどの障害時には,絶縁トランスを含む商用電源の直送回路に切り換え,100Vの電力を直接供給することができる。写真:11はひずみ地震計の設置がほぼ完了した状況である。

 ix)各機器の常数と周波数特性

 今回整備した観測種目とその常数を第1表に,第11~13図には特性曲線をそれぞれ示した。

 3.データの伝送と収録

 伝送装置経由のデータは,地殻変動A(サンプリング周波数1Hz,16bit,12ch,符号ST)地殻変動B(同1Hz,11bit,8ch,符号AP,TMなど),短周期地震波(同80Hz,12bit,4Ch,符号SP),長周期地震波(同5Hz,12bit,8ch,符号LP),監視信号(16bit,1ch,符号SV),制御信号(16bit,1ch,符号TC)などである。これらは,無停電電源装置による無欠測データで,アナログデータはすべて送信装置内でディジタル化される。なお,ディジタルデータ伝送の信頼性向上と雷を含む外部ノイズの影響を軽滅するため,約500メートル長の光ファイバーケーブルによって,処理室にある受信装置へ光伝送される。伝送のフォーマットは観測種目別に分け第2表の(a)と(b)に示した。受信装置では再び電気信号に変換され,地殻変動データは受信装置内のフロピーディスクにオンライン収録される。地震波データは2本の並列回線通信アダプター(PLCA)経由で,長・短周期別に処理装置内の磁気ディスクに,同じくオンラインで収集される。そして,この磁気ディスクに収集されたデータは9時と21時の2回に分け,自動的に磁気テープに排出され,収録が行われる。この場合,伝送データのサンプリング周波数がおのおの異なるので各要素のデータ量に差が生じ,さらに感度のまちまちなセンサーからの信号を取り込んでいるため,受信装置にかなりの前処理機能をもたせ,処理装置のオンライン負担を軽くしてある。すなわち,受信装置は3部分に細分され,消費電力の少ない16ビットのマイコンで,タイプライタと相俟って以下に述べるような各種の前処理を行っている。

 a)受信装置1

 常時,送信装置よりデータを受信し,ファイルに格納する。第14図に見られるように,伝送は双方向が可能で,受信装置から送信装置へコントロール信号を送り,送信装置の動作テストに用いている。このほか,伝送されてくる信号のコード変換(16bit化),時刻情報の割付,1秒ファイルの作製,短周期地震波の30秒遅延,長・短周期地震波のモニター出力および受信装置2と3へのデータ転送を行う。

 b)受信装置2

 主としてトリガー処理を行う。このため受信装置1から50ms毎にトリガー用短周期上下動成分の地震波を受信し,フィルタ処理をし,ファイルに格納する。そして受信装置3のタイプライタからのパラメータに従って地震判定の処理を行う。地震と判定されれば受信装置1および3へトリガー出力し,短周期地震波データの処理装置への転送及びペソレコーダの記録制御を行う。第15図の(a)と(b)はトリガー判定処理フロ-で,実際は(a)と(b)が直列に連なり,一方でトリガーされれば地震と判定される。フローを2つに分けたのは,松代付近のノイズの状況を考慮し,対象とする地震の周波数を1Hz付近と数Hz付近に置いたためである。(a)のフロ-は比較的周期の長い波を対象としており,S1と記した20秒間(パラメータで変更できる)の移動平均値とS2(1秒間移動平均値)を比較してトリガー判断がなされる。トリガーレベル(TL)はS1に,パラメータαを掛けた値で,S2がTLを連続してC回(パラメータで変更できる)越えた時点で,地震と判定される。トリガーストップの判断は,トリガーがかかった時点のS1のβ倍のレベルを,S1が切ったかどうかで行う。その後30秒間に再トリガーがなければ,最終的にトリガーストップとなり,データの転送は終了し,レコーダの制御も解除される。なお,微小地震や極近地震の場合,トリガー時間が短くて解析に必要な量の記録がとれないことがあるため,パラメータによるタイマーを設け,トリガーがかかった時点から一定時間だけ動作するようになっている。また,トリガーがかかりきりにならないよう15分間タイマーを用い,トリガーが15分間連続した場合,強制的にトリガーストップをかけるようになっている。次に,短周期用の(b)のフローを説明する。トリガーレベル(TL)を信号レベルが越えた回数と彼の周期(零線を横ぎる回数)から,トリガー判断をする簡単なフローで,トリガーストップなどは(a)に準ずる。図中のα,β,m,n,TTなどはタイプライタから入力するパラメータで,後述のタイプライタの項で説明する。第16図に,トリガー処理によって得られたモニター記録の例を示した。最上段はトリガー出力のもので,第2段目(既設地震計)及び第3段目(前掲第1表参照)の実時間記録に比べ,30秒の遅延が見られる。4段目以下は別の地震の記録で,いずれも30秒の遅延がかかっている。また3段目と最下段(倍率が低いので記録されていない)に見られるように,地震の大きさによって収録時間が異なり,ほぼ理想的にトリガーされている。但し,遠地地震のlater phaseは別の地震として収録され易く,また紡錘状に大きくなる地震ではトリガーのかかりにくくなる傾向がある。

 c)受信装置3

 常時,受信装置1から1秒分のデータを受信し,転送用ファイルに格納する。そして,短周期地震波は受信装置2のコマンドに従い,PLCA経由で処理装置内のディスクに,また長周期地震波は10秒毎に,別のPLCAで同じくディスクに転送される。地殻変動A及びBデータについては1分間平均値を計算し,タイプライタからのパラメータによってフロッピーディスクに収録すると共に,同じくタイプライタからのパラメータに従ってモニタレコーダにも出力する。また,処理装置異常の場合は,磁気ディスクに収集する地震波データもフロッピーディスクにデータ格納することができる。このほか,タイプライタからの各種パラメータの受付,装置内の情報(トリガー時刻,フロッピー書込情報,各種エラーメッセージなど)及び地殻変動データの時報値と日報値の出力管理を行う。なお,時計はエコー計測社製のJJY同期型クロノトロンで,目差は常に0になっており,時刻精度は5ms内外である。

 d)タイプライタの入力コマンド

 タイプライタからの操作をまとめて説明する。受信装置1に対し,短周期地震波のアナログ出力のパラメータを指定する。受信装置2に対し,地震判定用パラメータを指定する。受信装置3に対しては,地殻変動AとBのシフト処理のパラメータ措定,アナログ出力項目および記録感度の指定,フロッピーディスクへの出力時刻指定,長・短周期地震波の転送相手の選択(フロッピーディスク又は処理装置),Ⅰ/Oのオーバタイムの復旧通知及びフロピーディスクの復旧通知などを行う。第3表に各種のパラメータを掲げた。

 4.データの処理解析

 オンラインで収録されるデータは,1つはフロッピーディスクの地殻変動AとB,他方は9時と21時に自動吸い上げされる磁気テープの地震波データである。これら2系のデータは,サンプリング周波数がおのおの異なるので,処理装置のミニコンの機能低下をきたさないように伝送一処理装置間を一貫したデータの流れで結んだ。そして処理装置にはオンラインとバッチの両機能を持たせ,オンライン時はもちろん,地震波の自動排出時でも他のバッチ処理を拘束しない,並行タスクの使用が可能となっている。第17図に,データ処理装置の機器構成図を示した。機種は富士通株式会社のU400で,CPUは128KBのコアメモリをもち,周辺装置は40MBの磁気ディスク,MT(800/1600BPI)2デッキ,グラフイクディスプレイ(GD),XYプロッタ,フロッピーデスク(FPD),カードリーダ(CR),カードパンチャー(CP),ラインプリンタ(LP),タイプライタ(TW)などがついている。このほか,アナログ入力をディジタル変換して取り込むアナログICU(4ch,12bit,内4bitはレインジbit)がある。

 a)主ソフトとデータの流れ

 第18図に,データ及びコマンドの流れを示した。太い破線で囲った部分がオンライン処理系で,収録データの管理を行っている。他はすべてバッチ処理系で,点線がデータの流れ,実線がコマンドの流れを現わしている。ICUデータとは既設長周期磁気テープ記録式地震計で収録したアナログデータを,同時に記録されている時刻をもとに,CPU内のICUによって160Hzのディジタルデータとしてサンプリングしたものである。これもタイプライタからのコマンドでMTに排出し,データ収録を行う。ICU経由のデータも必要に応じ以下に述べる地震波と全く同じ処理を行うことができる。

 b)地震波のバッチ処理(験測)

 オンラインで収録されたMTをテープデッキにセットし,験測対象の地震を時刻又はファイル番号指定で,ディスクのWORK領域に転送する。この場合,1回に転送できる地震数は短周期で約20個,長周期で約13時間分の制限があるため,1日分の験測を行うにはディスク転送を2回行うことになる。転送が終了すると験測予定地震のリストがラインプリンタに打出される。これをもとにして対象地震の波形をGD上に表示し,各相,振幅,周期をGDのカーソルを駆使して読取りを行う。

 次にそれらの相名と振幅名をGDのキーボードから入力する。結果は定められたフォーマットに従ってラインプリンタ及び験測データMTに出力される。そしてもう一方,観測MTに生データを格納する。この間必要なコマンド及びタスクはすべてGDのキーボードと16個のファンクションキーを用いて行う。また各タスクの起動時にはGD画面上に,必要とする情報をオペレーターに問い掛けてくるから,定められたフォーマットで順に入力する。このあと,例えば地震の追加や削除,ある地震の内容変更などがあれば,上記験測MTの内容をGD上に再び表示し,対話形式で験測結果の修正を行いMTに格納する。最終結果のMTは地震原簿やブレティンを作製する時の元テープとして利用する予定である。なお,収録データの作図が必要であれば,GDのキー入力によりXYプロッターに波形を画かせることができる。

 C)地殻変動AとBのバッチ処理

 受信装置のFPDに収録される地殻変動関係のデータ量は通常2週間分(5分間ごとに収録)で,これを処理装置内のFPDで読み,DCソースMTを作製する(1フロッピー分データを1ファイルとした,多ファイルで構成される)。このMTをもとに任意のファイルを1つのファイルに結合し,処理解析用の観測MTを作製する,この間,GDのキー操作によりデータの補正,欠測期間の補間などを行い,連続したデータに編成する。観測MTは最終結果としての日報,月報をラインプリンタに打ち出したり,XYプロッタに波形表示するのに用いる。

 d)このシステムが運用されてからまだ日は浅いが,モニター記録,DC及び地震波の処理例,DCの月報と日報,地震リストなどの例を図19~33及び第4表~第11表にそれぞれ示した。なお付録として磁気テープファイル,ファイル・フォーマットなどを後部に掲げた。

* Observational Condition at Present and the Processing Results Obtained from Renewed Strainseismometer at Matsushiro Seismologicla Observatory ; by Noboru YAMAGISHI, and Shizuo KASHIWABARA.

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