緊急地震速報の特性や限界、利用上の注意

 緊急地震速報を発表してから強い揺れが到達するまでの時間は、数秒から長くても数十秒程度と極めて短く、震源に近いところでは速報が間に合いません。また、ごく短時間のデータだけを使った速報であることから、予測された震度に誤差を伴うなどの限界もあります。

緊急地震速報の特性や限界

強い揺れまでの時間はわずかしかありません

  • 緊急地震速報は、地震が発生してから、その揺れを検知し、解析して発表する情報です。一般に、緊急地震速報を発表してから強い揺れが到達するまでの時間は、数秒から長くても数十秒程度と極めて短く、場合によっては緊急地震速報が強い揺れの到達に間に合わないことがあります。
    強い揺れまでの時間はわずかしかない

緊急地震速報が強い揺れの到達に間に合わない場合があります

  • 解析や伝達に一定の時間(数秒程度)がかかるため、内陸の浅い場所で地震が発生した場合などにおいて、震源に近い場所への緊急地震速報の提供が強い揺れの到達に原理的に間に合いません。
    震源に近い場所では間に合わない
  • 緊急地震速報は時間とともに精度が上がり予想震度なども変化します。
    緊急地震速報(警報)の発表基準を少し下回る状態がしばらく続いたあと、地震計で大きな揺れを観測し、これをきっかけとして、緊急地震速報(警報)の発表基準となる予測震度を上回ることがあります。こうした場合に、緊急地震速報(警報)の発表が地震発生から数十秒後となり、結果的に強い揺れの到達に間に合わないことがあります。
    予測震度の変化
  • 予想マグニチュード3.5以上または予想最大震度3以上の場合に発表する緊急地震速報(予報)についても、警報の場合と同様、発表基準を少し下回る状態がしばらく続いたあとに発表基準に達し、結果的に遅れて緊急地震速報(予報)を発表することがあります。

予想には誤差が伴います

  • 少ない観測点での短時間の観測データから地震の規模や震源を推定し、各地の震度等を予想するため、予想震度や予想長周期地震動階級は±1階級程度の誤差を伴うなど、精度が十分でない場合があります。また、予想の誤差により、緊急地震速報(警報/予報)の発表基準を満たさず、緊急地震速報(警報/予報)が発表できない場合があります。
    少ない観測点で解析

予想に大きな誤差が発生する場合があります

  • 地震観測網から比較的遠い場所(100㎞程度以遠)で発生する地震では、震源やマグニチュードの推定値の誤差が大きくなる可能性があります。
    遠い場所では誤差が大きくなる
  • 深発地震(深さ100㎞程度より深い場所で発生する地震)では、沈み込むプレートに沿って地震波が伝わりやすいという性質が顕著に現れるので、震源の直上より震源から離れた場所で揺れが大きくなることがあります(異常震域)。
    また、現在、震度の推定に用いている経験式を深発地震に適用すると、実際よりも大きく計算されるなどの問題もあり、深発地震においては、震源とマグニチュードから震度を予測する従来の手法では正確な震度の推定は困難です。
    なお、1あるいは2観測点のデータを使っている段階では、深発地震であっても常に震源の深さを10㎞に仮定して震度を推定するので、この場合も震度の推定に大きな誤差が発生することがあります。
    異常震域
  • マグニチュードが大きくなるほど、地震断層面におけるずれ破壊の開始から終了までの時間が長くなります。およその目安として、マグニチュード6クラスでは約10秒、マグニチュード8クラスでは約100秒です(「地震の事典」(宇津、2001)による)。
    このため、一般的にマグニチュードを精度良く推定するためには、マグニチュードが大きな地震ほど長い時間が必要となります。
    緊急地震速報は一刻を争う情報であり、マグニチュードが大きな地震では、地震断層面の破壊がまだ続いている中で緊急地震速報を発表することになります。緊急地震速報では地震断層面の破壊開始の初期段階で得られるデータから精度よくマグニチュードを求めるための推定式を用いていますが、その推定精度には限界があり、マグニチュードが大きな地震ほど、誤差が大きくなる可能性があります。
    巨大地震では推定精度に限界がある

状況により的確な緊急地震速報を発表できないことがあります

  • 1観測点のデータを使っている段階では、地震以外の揺れ(事故、落雷)や機器障害により誤った緊急地震速報(予報)を発表する場合があります。
  • 緊急地震速報(警報)は、こうした誤報の可能性を減らすため、2点以上の観測点で揺れを観測した場合に発表することとしています。地震以外による検知
  • 複数の地震が時間的・距離的に近接して発生した場合に、別々の地震と認識できず、規模の大きな1つの地震が発生したと認識するなどして、的確な緊急地震速報を発表できないことがあります。(予想震度の誤差が大きくなることや、予想震度が大きな緊急地震速報を遅れて発表することがあります。)
    そのような緊急地震速報(警報)を発表した際には、以下の方法で迅速にお知らせします。但し、この基準によらず「お知らせ」する場合があります。

観測した最大震度 震源・震度情報 気象庁ホームページ
震度2 「この地震で緊急地震速報を発表しましたが、強い揺れは観測されませんでした。」
との付加文でお知らせします。
「お知らせ」を掲示
震度1
震度0(無感)

複数の地震

日頃からの備えが重要

緊急地震速報が間に合わない場合や、猶予時間がわずかしかない場合があります。

また、就寝中に緊急地震速報を聞いた場合など、とっさの安全確保行動がとれない可能性もあります。

日頃から地震への備えを心がけると共に、室内の安全な場所を把握しておきましょう。

日頃からの備えの例

  • 住宅、建造物の耐震化
  • 家具などの転倒・移動防止
  • 備品の落下防止
  • ガラスなどの飛散防止家具の転倒防止例

※詳細は総務省消防庁ホームページ「地震による家具の転倒を防ぐには」などをご参考としてください。