南海トラフ地震臨時情報について

南海トラフ地震の発生は予測できるのですか?

 南海トラフ地震は、おおむね100~150年間隔で繰り返し発生していることが分かっていますが、その発生間隔にはばらつきがあり、震源域の広がり方には多様性があることが知られています。また、地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測することは困難であると考えられています。

 一方で、全世界で発生した大規模地震の事例から、大規模地震の発生後、隣接する領域で同規模の地震が発生する可能性が相対的に高くなることが知られています。南海トラフ沿いで発生した大規模地震の直近の2事例でも、東側の領域で大規模地震(1854年の安政東海地震、1944年の昭和東南海地震)が発生した後、それぞれ32時間後、2年後に残る西側の領域で大規模地震(1854年の安政南海地震、1946年の昭和南海地震)が続けて発生しています。そのため、今後南海トラフ沿いで大規模地震が発生した場合、続けて大規模な地震が発生する可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとの評価が可能と考えられています。

 また、南海トラフ沿いの大規模地震の想定震源域の周辺では、平時からプレート境界面で「ゆっくりすべり」という現象が観測されています。この現象はプレート境界の固着状況の変化を知る手がかりとなる現象と考えられています。この「ゆっくりすべり」が通常とは異なる場所や発生様式(変化速度が大きいなど)で起きている場合には、定性的には南海トラフ地震発生の可能性が平常時に比べて相対的に高まっているとの評価が可能と考えられています。

 南海トラフ沿いで異常な現象が観測されず、突発的に南海トラフ地震が発生することもあります。また、地震発生の可能性が相対的に高まったと評価した場合でも南海トラフ地震が発生しないこともあります。いずれにしても、南海トラフ地震の切迫性は高い状態にあり、いつ地震が発生してもおかしくありません。

関連リンク

南海トラフ沿いで異常な現象が見られた場合、何らかの情報は発表されるのですか?

 南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合や、観測された現象を調査した結果、南海トラフ沿いの大規模な地震発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると評価された場合などに、「南海トラフ地震臨時情報」を発表します。

※南海トラフ沿いでマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合やひずみ計に有意な変化を観測した場合などを想定しています。

関連リンク

南海トラフ地震が発生する前には、必ず「南海トラフ地震臨時情報」が発表されるのですか?

 南海トラフ地震の発生前に、必ずしも異常な現象が観測されるとは限らないため、「南海トラフ地震臨時情報」を発表していなくても、南海トラフ地震が発生することがあります。地震は突発的に発生するものと考えて、強い揺れなどへの備えをお願いします。

「南海トラフ地震臨時情報」の解除にあたる情報は発表されるのですか?

 「南海トラフ地震臨時情報」の発表に伴い防災対応を実施する期間は、大規模地震発生の可能性は時間とともに低下することと社会的な受任の限度を考慮して、政府の計画であらかじめ決められているため、気象庁から防災対応を解除する旨の情報を出すことはありません。なお、通常と異なる「ゆっくりすべり」の発生にともない「巨大地震注意」の「南海トラフ地震臨時情報」を発表した場合の防災対応をとる具体的な期間は、「すべりの開始から変化が収まった時点を起点として変化していた期間と概ね同程度の期間が経過するまで」 と定められているため、気象庁では「ゆっくりすべり」の状況を、適宜「南海トラフ地震関連解説情報」でお知らせすることとしています。

地震発生の可能性が相対的に高まっているという評価を行う「南海トラフ地震臨時情報」と、これまでの東海地震予知情報との違いは何ですか?

 「東海地震予知情報」は、2~3日以内に想定される東海地震が発生するおそれがある場合に発表され、これに基づいた応急対策を行うことになっていました。しかしながら、現在の科学的知見からは、地震の発生時期等の確度の高い予測はできないのが実情です。一方、現在の科学的知見からは、異常な現象の観測時に、地震発生の可能性が相対的に高まっているといった評価は可能と考えられています。

 「南海トラフ地震臨時情報」は、南海トラフ沿いで異常な現象が観測された場合や、観測された現象を調査した結果、南海トラフ沿いの大規模な地震発生の可能性が平常時と比べて相対的に高まっていると評価された場合などに発表する情報です。

関連リンク