気象庁におけるAIの活用

背景

 気象庁では、観測・予測技術について常に最新の科学技術を取り入れ技術革新を行い不断の改善を進めるとともに、防災気象情報の高度化に取り組んでいます。 AI技術についても、1970年代から数値予報ガイダンスなどの気象予測に従来からのAI技術の一つである機械学習を活用しています。 また、深層学習といった先端的なAI技術(ここでは「先端AI技術」といいます)を気象観測・予測で活用するため、平成31年(2019年)から令和5年(2023年)にかけて、理化学研究所革新知能統合研究センターと共同研究を実施し様々な知見を得ました。

 近年、AI技術の進展は著しく、気象分野でも気象再解析データ等を学習データとして予測を行うAI気象モデルが登場するなど、AI技術の応用は急激に広がりつつあります。 また、交通政策審議会気象分科会が令和7年(2025年)6月にとりまとめた『「2030年の科学技術を見据えた気象業務のあり方」の補強~近年の社会動向を踏まえた追加的施策~』では、防災気象情報の更なる高度化に向けては社会で急速に利用が進む先端AI技術の活用が必要であることが示されました。気象庁では、2030年、更にその先を見据えた取組として、その実現に向け鋭意取り組んでいます。

気象庁の業務におけるAI活用イメージ

 気象庁では、令和6年(2024年)に気象業務のあらゆる分野における先端AI技術の活用可能性を検討しました。 様々な学習データから高度な推論を行うことができる先端AI技術を活用することで、従来の数値予報モデルに新たにAI気象モデルを組み合わせることによる気象予測の高精度化や、気象庁の業務の根幹となる観測データの品質向上、観測データを基にした解析や推定の高精度化、AIによる作業支援など、気象庁の様々な業務を強化することができる可能性があります。
気象庁の業務におけるAI活用イメージ

 具体の活用イメージの例は以下の通りです。

  • AI気象モデルと従来モデルの併用等による予報精度向上(将来予測)

具体のAI活用イメージの例

  • 次期ひまわりの最新センサによる膨大なデータのAI処理(解析・推定)

具体のAI活用イメージの例

  • AIを利用した地震観測データの高度利用(観測)

具体のAI活用イメージの例

 一方で、AIの使用にあたっては、処理の過程がブラックボックスになり判断基準の説明が困難になるといったようなリスクがあることや、AIの学習には膨大な計算機資源が必要であることなどが課題です。

実現に向けた取り組み

 気象業務全般に最先端のAI技術を活用し、高度化した防災気象情報を適時・適確に提供することで、様々な主体で効果的に活用され、防災対応・行動に貢献できるよう、気象庁は以下の取組を進めていきます。

  • AIに学習させるデータとして気象再解析データや気象衛星データ等を活用
  • 自然科学の知見も活かした先端AI技術の研究・技術開発を推進
  • 効率的なAI計算に適したスーパーコンピュータ等の計算機資源の整備
  • 技術開発における連携、AIのリスクや課題に関する知見共有等のため、産学官連携を強化

問合せ先

気象庁 総務部 企画課
 電話:03-6758-3900(内線2277、2239)  

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